Philosophy
<"対話"を大切にします。>
■偏りのない"情報"を集めるために
建物を計画するにあたっては、いろいろな条件と情報収集が必要となってきます。これらの収集とあわせて多方面の検討をするには様々な"対話"が重要になってきます。"対話"には、関連する「人」(利用する人、つくる人等)はいうまでもなく、関連する「もの」(お隣の窓や植栽、遠くの山並み等)や関連する「こと」(お祭り、昔は田んぼだった、空き巣が多い等)も含まれます。つまり、"対話"というのは、よく聞き、よく見、よく調べ、よく感じることなのではないか、と思います。
われわれは"対話"をするときには、先入観や常識、われわれ個人の嗜好や信条をいったんリセットし、まっさらな気持ちでのぞむことをこころがけています。これらを無条件に受け入れるようになってしまうと、いままで気がつかなかった新しい"対話"の成果を逃してしまうことになりかねないと思うからです。
その成果は一つの計画で消費してしまうのではなく、いままでに行った対話や経験から得られた知恵や技術とともに大事に育み、積み重ねていきます。
■変わることのない"骨格"をみつけるために
余条件や情報の収集をもとに建物の"骨格"を考えます。これは、その建物にとって、大きさや形、開口部の位置や大きさ、数がどのようにあるのが相応しいかを指し示す基本形といえます。この"骨格"は建物が壊されるまで残るものなので、将来の対応も含めて、ご利用になる方々との密なる対話によって導かれるものでなければなりません。その検討には技術的視点も少なからず必要となってきます。
通常、建物の構想は分業で行われます。人の動きや間取り、風雨をしのぐといった機能面、形等を検討する「意匠デザイナー」、建物が建物自身の重みや地震、風、雪等に耐えうる検討をする」構造デザイナー」、建物内外の環境や防災、防犯等を多角的に検討する「設備デザイナー」がその代表といえるでしょう。(もちろん、これら以外にも重要な分業役割もありますが、大きなくくりとしてはこの三つです。)
いままでは意匠デザイナーが"骨格"をおおむね決めてから他の分業デザイナーとの協働に入るケースが多かったのですが、最近では構想初期の段階で分業の壁を取り除き、よりよい"骨格"を一緒になって考えることが増えてきました。このことは、これまで以上に他の分業への理解と知識が増えたからに他なりません。
われわれは、この対話環境を大切にし、意匠、構造、設備の合理化された"骨格"を模索します。
■かけがえのない"舞台"となるように
練り上げられた建物の"骨格"をもとに具体的な仕様を考え、実際につくっていきます。ここでも"対話"が不可欠で、一連の"対話"によって、計画者と一緒になって住民や利用者が自分たちのために考えるようになり、つくりあげたものに「愛着」を感じるようになるのではないかと考えます。
建物や街は"舞台"であります。主役はそこの住人。その"舞台"は住人個々のどんな"イロ"(個性、価値観)をも受け入れ、さまざまな演目(くらし、できごと)がくりひろげられても、変わらない「何か」を醸している、かけがえのない"舞台"となるようつくり上げます。