一級建築士事務所 田建築研究所 ATELIER"DEN"

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Q&A

設計事務所とハウスメーカー、設計施工工務店(あるいは街の大工さん)との違いは何ですか?

利害関係のない公正なクライアントの代理人

われわれ設計事務所の業務は「"もの"を造るための図面や仕様を決定し、その図面や仕様に沿って"もの"が間違いなく造られているかをチェックする。」ことです。
ハウスメーカー、設計施工工務店との最大の違いは、他の何の束縛もなく純粋にクライアントの代理人として、計画や工事を推進する立場であるということ、です。
このことの利点は、計画段階、見積段階、工事中、竣工後で違いがはっきりしてきます。
それゆえ、公共工事では設計監理業務は独立した業務として発注することが前提であり(監理業務を別にすることもあるほどです。)民間においても一般的な発注形態といえると思います。住宅だけが少し特殊なのかもしれません。

・計画段階

設計事務所には、ハウスメーカーの標準仕様や設計施工工務店の流通優先仕様のように束縛(あるいは意識)するものがないことから、クライアントの要望を客観的に検討でき、より自由度の高い提案が可能になります。
*この標準仕様、流通優先仕様がハウスメーカー、設計施工工務店(以下、彼ら、とします。)のアドバンテージであり、「坪30万円。」等の単価の前提条件となっています。この仕様からはずれることは、クライアントの負担はもちろん、彼らの利益率低下につながるだけでなく、標準外の作業による設計や施工手間が増えるため、彼らから積極的に提案することは少ないと思います。
また、「設計料無料あるいはサービス」というのは、上記理由から設計の手間を少なくすることが前提としてあり、狭小敷地や変形敷地への合理的設計や完全フルオーダーの世界にひとつしかない建物の実現等、手間のかかる事案には特に不向きかと思います。

・見積段階

実施設計が完了すると見積作業に入ります。設計事務所でも見積はしますが、実際に建物を造る側の施工者から見積を出していただき、それを査定することが多いです。公的資料や過去のデータに基づき、金額の査定するのですが、1社ではなく複数社から"同じ条件"(これが大事です。)で見積をとり比較査定する相(あい)見積が一般的です。
*ハウスメーカーや設計施工工務店では相見積をすることはほとんどありません。設計と施工が不可分であることが大きな理由です。単価や数量等は彼らの基準で決まりますので、「~工事一式」といった見積項目も多くなり、適切なものかどうかの判断が困難になります。結果、実勢より高価になったり、工事範囲が不明瞭(あるいは説明不十分)な場合もあり、トラブルにつながりかねないと思います。

・工事中

工事期間中、設計事務所は図面、仕様の通りに施工できているか、のチェックを行います。つまり、造り手である施工者に対し、問題点等があった場合、指示指導する立場となるわけです。追加や変更が発生した場合の増減額の事前合意もそのつど確認しつつ前に進みます。
*ハウスメーカーや設計施工工務店は建前上、監理者(工事管理者とは異なります。)は存在します。ただ、指示指導する側とされる側が元は同じなのです。適正な監理かどうかは確認することもかないません。追加変更についても説明不十分なままになる場合も多いようです。

・竣工後

建物が完成して引渡し後、設計事務所では、構造規模あるいは自主規定により定期検査を行いますが、そのとき以外でも、不具合等のクレーム連絡網の窓口になることが多いと思います。(当方ではそうしています。)その不具合の種類、程度、原因を確認し、瑕疵の有無を判断し適正な処理に導きます。
*ハウスメーカーや設計施工工務店はクレームの当事者になることが多いため、確認、検証、処理に及び腰になることも多く、非常に時間がかかります。(責任の所在があいまいなままクライアント負担工事となるケースもあるようです。)

構造についてどのように考えていますか?

切り離して考えられないもの

当事務所の考え方でお書きしたように"骨格"を技術的に成り立たせる重要な要素として構造があると考えています。
近年、"骨格"と構造が一致する、もしくは限りなく一致する傾向が増えてきました。この一致は意匠デザインとの一致につながるケースが多くなり、スペース等の合理化や将来変化への対応の柔軟さに寄与するものとなってきています。また、このことは、いままでにはない新しい表情を獲得することにもつながることもあります。 多発する地震や、耐震偽装により、一般社会の建物の構造への関心は非常に高いものがあります。
われわれはこのような状況は建物にお住まいになる方やご利用になる方々に対し、今まであまり表に出ることのなかった構造のお話をお伝えする良いきっかけになっているのではないかと考えます。
安全性、意匠性、経済性といった側面を、従来のような完全な分業環境ではなく"対話"によってバランスを保った構造を模索したいと思います。

建物の設備や環境コントロールをどのように考えていますか?

機械と自然をバランスよく

兼好法師の言をひくまでもなく、本来、建物のありよう("骨格")は、快適性を左右するものでした。機械による環境制御の技術により、そのありよう("骨格")を意識することなく快適な環境を獲得できるようになりました。快適性だけでなくデリケートな建物機能(病院や博物館等)充足や、個々人のライフスタイル(夫婦共働き、アレルギー持病等)、建物の立地環境(騒音や空気汚染、防犯等)への回答が可能になりました。
技術の進歩の積み重ねは、利用者の際限のない快適性の欲求を満たしましたが、機械環境の制御は制御エリアとそれ以外の快適性の差をどんどん広げていき、制御エリアに慣れてしまった人々の環境抵抗力の低下を招く一因ともなってしまいました。また、その快適性も暖かさ、涼しさ、明るさ等偏ったものとなり、そよぐ風や虫の声、雨の匂い、月あかり等の「細やかな心地よさ」を忘れがちになっているような気がします。
この機械環境制御を無批判に受け入れてきたことは、これまで設備は"骨格"構想に初期段階から深くかかわることがあまり多くなかったことと無関係ではないと思います。
われわれは上述の「細やかな心地よさ」を利用者のみなさんに思い出していただく対話を怠ってきたのかもしれません。このことを機械制御の恩恵とあわせてお伝えし、より効果的に実現できる建物の"骨格"の構想を、機械の良さを加味した総合的な"設備"の視点からも考えられるような手順を考えていきたいと思っております。

断熱方法についてどのように考えていますか?

材料性能、形状、設定ラインが大事

断熱のコントロールはその機能を持つ材料の性能と気密化、建物の形状(つまり建物の表面積)、断熱ラインの位置(構造体の内側か外側か、居住エリアと外部との距離)の検討が主となります。材料とは大きくは断熱材と、開口部の建具の種類と構成になります。

  1. 断熱材について

    大きく分けて自然素材系、プラスチック系、鉱物系があります。これらは施工する場所に応じて使い分けられます。

    a.自然素材系
    木材繊維を主原料としてつくられた断熱材です。断熱性能のほか、吸放湿効果があります。施工現場で直接吹き込む工法に適していると言われています。
    b.プラスチック系
    プラスチックを発泡させた断熱材です。薄くて、軽いうえ、高い断熱効果があり、吸水性がないため、結露防止効果も期待できます。
    c.鉱物系
    ガラス原料や鉱石を溶かして繊維にした断熱材です。経済的で扱いやすいため、もっとも多く使用されています。(吸水性があるため入念な防湿施工が必要になります。)
  2. 建具の種類と構成について

    a.開閉方法の種類
    「引き違い」、「上げ下げ」、「外倒し」、「横滑り」、「縦軸回転」といったもの等がありますが、一般にレールの上を横にすべるタイプは気密性が他よりもどうしても悪くなります。
    b.枠の材料
    「木製」、「アルミ製」、「スチール製」、「ステンレス製」、「樹脂製」があります。断熱性の観点からだと、熱伝導率の低い「木製」、「樹脂製」が有利です。(防火上の法的な制約を受けるケースが多いので、これらはその基準を満足したものでなければ使用できません。)
    c.枠にはめられる材料
    光や景色を取り込むという材料に限ると、「ガラス製」、「樹脂製」が考えられます。材料のみの比較では大差ありませんが、{ガラス製}にはさらにバリエーションがあり、遮熱効果のあるガラスや、複層にしたものが材料単体よりも断熱効果があります。複層の中間層も空気を入れたものからアルゴンガスを封入したものまであり、費用対効果を考え、適材適所の選択が必要かと思います。(上記同様、法的制約を受ける場合、注意が必要です。)
  3. 建物の形状について

    同じ容積でも建物の表面積が異なれば断熱対策も異なってきます。これは建物環境のつくり方に左右されますので、表面積の大小が温熱環境の良し悪しと単純に結びつかないのですが、表面積が大きければ外部(あるいは外部から見れば内部)の影響を受けやすくなり、小さければ影響は少なくなります。(ドイツではこの影響を考慮した指針を出しています。)
    つまり、内部環境と外部環境の評価の仕方で断熱対策も変わってきます。(空調前提の夏期や冬期は内部環境の方がよい場合が多いでしょうが、空調のいらない中間期は外部環境の方がよい場合が多いのでは、といった評価です。)

  4. 気密化について

    空気の流入による熱のやり取りを最小限にするため、隙間をなくすことは有効です。

  5. 断熱ラインについて

    a.内断熱
    構造体の内側もしくは構造体のすき間に断熱材を充填する方法。安価で施工も容易なため非常にポピュラーな方法ですが、断熱ラインが内部空間のすぐ近くなので断熱材次第では外部環境の影響を受けやすくなります。また、構造体等で断熱が分断され、構造体そのものが外部環境にさらされることになり、ヒートブリッジ等により内部結露を誘発するリスクが高く、充填材も吸水性がある場合、これらの排出ルート(後述の通気層)を確保することが不可欠です。充填断熱材には室内側に防湿フィルムがついていることが多く、これを隙間無くしっかり施工すれば次世代省エネ基準を十分満足できる仕様となります。
    b.外断熱
    構造体の外側に断熱材を貼り付ける方法。内断熱の短所を補う効果が期待できますが、壁が厚くなること、構造体の外側に断熱材があるので構造体から外壁仕上げが離れるため、重量の重い仕上げ材は不向きです。(例:漆喰等の左官壁、タイルや石壁等)
    c.居住エリアと外部との距離
    建物には人が常にいる空間(ダイニング、リビング等)といない空間(納戸、水廻り等)があります。人がいる空間を居住エリアと呼び、これを周りに人のいない空間を配置することで外部からの影響を受けにくい環境とすることが可能になります。この場合、人のいない空間が広い意味で断熱層となっていると考えられます。

結露のコントロールについてどのように考えていますか?

水蒸気を少なく、温度差を少なく、備えが肝心

結露のメカニズムは温度ごとに許容される空気中の水蒸気が、その許容量を超えたときに水蒸気ではなく水に変化してしまうことです。水蒸気の許容量は温度が低くなればなるほど少なくなります。ある一定の空間の中でも温度の低いところと水蒸気が多く分布しているところで結露は発生しやすくなります。
したがって結露のコントロールは、

  1. 温度の低いところをなるべくつくらないようにすること
  2. 水蒸気を多く発生させないこと
  3. 仮に結露しても湿気に耐える素材にすること
  4. 水蒸気を滞留させないようにすること、発生した水蒸気を排出できるようにすること

これが現実的な方法だと思います。
また、建物における結露の問題は大きく2種類あります。1つは室内結露(窓面の結露等)、もう1つは壁体内部結露(壁の中で発生する結露)です。

  1. 室内結露対策

    a1.温度の低いところをなるべくつくらない方法-1→気密化
    断熱が施されていることが前提ですが、外部と内部との間で空気のやり取りをなくすことで、外部と内部の温熱やりとりをなくします。このことでのムラは軽減できます。
    ただ、内部水蒸気環境は内部に人等がいることで刻々と変わっていきます。ゆえに、後述のd1計画換気とセットで考える必要があります。
    a2.温度の低いところをなるべくつくらない方法-2→対流促進
    お風呂のお湯をかきまぜるがごとく、シーリングファンや機械換気システム等により空気を撹拌します。
    a3.温度の低いところをなるべくつくらない方法-3→居住エリアの保護
    建物には人が常にいる空間(ダイニング、リビング等)といない空間(納戸、水廻り等)があります。人がいる空間を居住エリアと呼び、これを周りに人のいない空間を配置することで外部からの影響を受けにくい環境とすることが可能になります。この場合、人のいない空間が断熱層となっていると考えられます。
    断熱と同様の考え方ですが、居住エリアを外部から切り離すような計画であれば温度差は大きく生じません。
    d1.水蒸気を滞留させない、発生した水蒸気を排出する方法-1→計画換気
    機械換気システムにより、余分な水蒸気を排出します。
  2. 壁体内部結露対策

    これは(1)の室内結露が比較的目に見えるところで発生するのに対し、通常は目に見えません。また、環境をコントロールできる内部側ではなく外部側で発生するため、ある程度結露の発生を想定した場合の措置を講ずる必要があります。(1)のaのコントロールは事実上不可能だとすると下記の対策になります。
    c1.湿気に耐える素材にする方法-1→プラスチック系断熱材の採用
    <断熱方法についてどのように考えていますか?>でお書きしたように断熱材は空気を内包させるため多孔質で、湿気を含みやすい構造になっています。この多孔質の穴を細かくしたのがプラスチック系です。ただ、これ単独では他の材料も含めた内部結露ケアになりません。
    d2.水蒸気を滞留させない、発生した水蒸気を排出する方法-2→通気導入
    躯体内部に通気層を設け空気を循環させることで水蒸気だけでなく、発生してしまった結露による湿気も排出できるよう考えられた工法です。空気の循環方法は強制と自然とありますが、いずれにしても内部結露対策はこの通気工法がもっとも効果的だと思います。われわれはすべての建物でこれを標準仕様としています。

内部環境のコントロール方法はライフスタイルと関係がありますか?

アクティブ型とパッシブ型、二つに一つではないですが・・・

断熱結露対策は予算もさることながら、そこに居住されるかたがたのライフスタイルによって取捨選択が必要です。その選択基準としてライフスタイルと密接にかかわってくるのが内部環境のつくり方になります。大きく2つあります。気密化と計画換気空調による自律型のアクティブ環境型と、自然エネルギーを最大限取り込む依存型のパッシブ環境型があります。以下にコメントします。

  1. アクティブ環境型

    住宅においてはいわゆる高気密高断熱計画換気空調仕様がひとつの完成形かと思いますが、効果を最大限発揮するには高気密が不可欠です。高気密高断熱仕様は寒冷地を主に想定した仕様で、効果を得るには開口部を閉め切ることが前提となり、外界の影響を遮断した環境をつくりだすことにより機械制御しやすくしているものです。それゆえ空調負荷が低減され省エネにも寄与するのです。
    この型を選択するケースとして以下が考えられます。(当方で検討したケースです。)

    • 花粉症、アトピー等アレルギーをお持ちの方がいらっしゃる場合
    • 夫婦共働き等で日中留守にしていることの多い場合
    • 狭小敷地で有効な外部空間(ニワ等)とセットになった開口部の確保が難しい場合
    • 周囲の環境が排気ガスや騒音で良好でない場合
    • 病院や美術館等デリケートな内部環境とする必要がある場合
  2. パッシブ環境型

    これはアクティブに対する考え方ではなく、アクティブの中にパッシブの長所を取り入れることも十分に可能です。(太陽光や熱、地熱、雨水、井水利用等。)
    住宅において上記との大きな違いは空気の自然流入の程度(気密化の程度)です。具体的には換気用の開口部の種類と配列、その付近の外部環境の作り方(ニワの整備)でしょうか。
    パッシブ型のひとつの完成形として二重通気工法という考え方があります。これは構造体の内外に通気層を設けて内外の通気層をセンサーにより弁の開閉でつなげたり切り離したりすることで、内部環境に外部環境の良さを取り込むベンチレーサーになったり、内部環境を保持する保温層になったりする仕組みです。
    省エネ効果は機械制御で外部に影響を受けないことにより、アクティブ型の方が予測はしやすいかもしれません。
    (快適性には個人差があり生活の自由度、自然とのかかわり、といった観点からパッシブ型を選択し、機械に可能な限り頼らない結果、省エネとなるケースもあります。)
    センサーによる制御はしておりませんが二重通気層により快適な環境を獲得しつつ、それを建物のデザインに活かした例も当事務所の建物事例にあります。

仕上げや材料、素材についてどのように考えていますか?

五感を刺激するものすべて、それぞれの個性をみつけたいです

  1. 五感を刺激するすべてのものが"素材"

    われわれは材料や素材には木や石、金属といった材料だけでなく、色や光、音、匂い(香り)、ツルツル・ザラザラといったテクスチュアも含めて考えます。五感(視覚、触覚、聴覚、嗅覚、味覚)を刺激するものすべてを同じように考えたいと思っているからです。(もっとも、味覚を刺激するような建築はあまりお目にかかれませんが、あったら面白いですね。)

  2. 特性を見極めます。

    いずれの素材にせよ、その特性をよく見極めることからはじめたいと思っております。
    通常の使われ方だけでなく、隠れている特性がないか、またその隠されていた特性を活かす使い方は何かを考えるようにしています。(特に、ある特定の目的に作られた材料や製品の隠された特性を探すことにささやかな喜びを感じています。)

コストについてどのように考えていますか?

適正価格の見極めとご要望の整理が必要

  1. 適正価格の見極め

    建設業界の価格決定プロセスは残念ながら他業種に比べて非常に不明瞭なものといわざるをえません。最大の理由は建物が「一品生産品である」という点だと思います。一つとして同じ立地、規模、形状、仕様、がありません。すべてが「特注」なのです。「特注」ゆえ見積形式は統一されていません。
    われわれは、見積の項目を可能な限りわれわれが他の事例や公的資料等で比較検討しやすくするために、細かく分けてもらっています。細かくすることで単価や数量、手間や経費が見えてきます。複数の合い見積により、施工者間の得手不得手も見えてきますし、上記の比較と合わせて実勢に近い"適正価格"を見極めまることに努めています。

  2. ご要望の整理

    建物計画は楽しいものでなければなりません。われわれはその楽しい環境をクライアントといかにつくりあげ、共有できるかを常に考えています。ただ、コストの話は多くの場合あまり楽しい話にはならず、予算オーバーのときは、どうしても後ろ向きになってしまうものです。
    われわれは計画を進める上でご要望の意味を深く掘り下げるようにしています。それにより合理化できる"ご要望の整理"を行うようにしています。また、ご要望の中にも優先順位があり、その優先順位のつけ方へのアドバイスも随時行っています。このことで仮に予算オーバーという事態に直面しても前向きにお考えいただけるような素地づくりを心がけております。

セキュリティ・プライバシーはどのように考えていますか?

何を守りますか?どこまで開きますか?

日本の町並みは道路とそれに沿った塀が形作っているところが多いのが現状です。役所が塀の作り方や生垣、緑化を促進させる施策をとっている地域もあるのですが、道路(公的空間)と自分たちの土地(私的空間)の間ははっきりとした線引きがなされています。これは道路側だけでなくお隣との間もそうですね。 自分たちの土地、自分たちの生活を守る方法は「自分たちで守る」という意識の強さの現われではないかと思います。(所有意識の誇示との見方もありますが、物理的な障壁はなんらかの防御の姿勢と見たほうが、より自然かな、と思います。)
この「自分たちで守る」ということが"セキュリティ・プライバシー"を考える上でポイントになってくると考えています。自分たちの何を(どこまでを、といってもいいかもしれません。財産、みられたくない生活の側面等)守るのか、自分たちだけで守れるのは何か、をよく考えてみると塀の作り方、有無について考えがおよぶようになります。なぜなら、自分たち以外(地域の目等)で守ってもらえることも結構あるからです。
また、自分たちの土地の中では、自分の場所という考え方がでてきます。住宅でいいますと、自分の部屋とか個室とでもいうべきでしょうか。これも自分たち(住宅の場合、家族)の中で自分の守るものは何か(私物、個人の秘密等)、あるいは自分を守るものがあるのかを考えてみるとよいでしょう。 つまるところ、"セキュリティ・プライバシー"は領域の捉え方で変化するものといえるかもしれません。 近年では自分たち(住宅の場合家族)という集団の領域とそれ以外との関係だけではなく、ダイレクトに自分という個人の領域とそれ以外の関係のみで成り立っている建物も増えてきています。 われわれが、この領域を決めることはできません。しかし、領域分けの種類、方法、それによって起こりうることのアドバイスをさせていただくようにしています。

バリアフリーについてどのように考えていますか?

個々にあわせたバリアフリーも必要

一般に"バリアフリー"というと、老若男女、健常者や障害をお持ちの方、分け隔てない状態を目指したものであることは、常識になりつつあります。これを建物に当てはめると「段差がない」とか「手すりがついている」といったように、その機能的側面に力点が置かれることが多いと思います。
不特定多数の利用者を対象とした建物ではこれら機能を「あらかじめ充足」させることは法令上でも基本となり、当然であると思います。しかし、住宅等における特定の利用者の場合はどうでしょう? われわれは現時点で、特に必要ではない限り「あらかじめ充足」ではなく、「できるようにしておく」程度に考えておいたほうがよいのかな、と考えています。
いたれりつくせりの機能ゆえに、人間の抵抗力(自立した生活力のようなもの)が衰えていくのではないか、と危惧してしまいます。
元気なのに、まだ若いのに、「老い」を想定し、"バリアフリー"を優先した計画とするのは、もったいないような気がしませんか?
身体状況の変化は人それぞれにやってきます。画一的に統一されたバリアフリー機能よりも、個人に合わせた"バリアフリー"が、これからは必要なのではないでしょうか。

収納についてどのように考えていますか?

建物には使われていない場所がいっぱい

建物を利用する上で重要なスペースですが、同時に人が滞在することはないため、そこに納めるものの特質を的確に見極めたうえで、その大きさや使い勝手、場所を計画する必要があるといえます。

庭や外部空間についてどのように考えていますか?

土地を使いきりましょう!

外部環境や空間と建物がしっくりと良い関係でたたずむ姿はいいものですね。また、建物内にいるときにその内部空間にふさわしい外部空間が寄り添っていると心が和みます。
このように建物の建つ外部環境と建物の内部環境双方を意識した庭や外部空間の計画をこころがけています。

狭小地において緑や自然環境の取り入れ方についてどのように考えていますか?

"小さいこと"は、いろんなものが"身近に感じること"

  1. 借景

    自分の土地が小さくてもお隣やお向かいの緑や、あるいは一部でも敷地から視線の抜ける部分があれば、その部分に向かって開口部を設けるようにしましょう。また、自然を感じるのは緑だけではありません。空や、場合によっては、お隣の窓のない白い壁に斜めに落ちる光も切り取る窓次第で素敵な"絵"になります。
    土地を探すにあたり、このあたりもポイントにしても良いかもしれません。

  2. 屋上緑化

    都心密集地では地面のレベルで緑地を確保するのは困難です。ただ、建物には屋根があります。足元で難しかった"ニワ"を屋上にもってきたらいかがでしょう。現在では軽くて保水力のある軽量土壌があり、少ない量でも菜園等が可能な種類も出てきています。
    環境負荷低減効果があり、断熱効果により省エネにも寄与します。また、自治体によっては緑化による助成もあります。

  3. 壁面緑化

    地球博でも脚光を浴びていた都市緑化の手法の一つに壁面緑化があります。これも様々な種類が研究されています。室内からの緑の景もさることながら屋上緑化同様環境負荷低減効果があり、やり方によっては建物自体の耐久性向上にもつながります。

  4. 収納等の上下のスペース利用

    建物内部の空間に視線を移すと、使い切れていないスペースが散見されます。大きなものは収納上下、家具上部、扉上部、等々。このようなスペースをガラスの植栽スペースに充てたり、単純に室内窓としてしまうだけで、広がりや奥行きにつながります。