早稲田の家

＜コンセプト＞

計画地は都心の住宅や商店、町工場が立ち並ぶ高密度な立地である。

敷地面積が30㎡強で10坪に満たないいわゆる狭小地であり道路側以外は隣家も境界ぎりぎりで建っているため、道路側からのみが採光・通風のよりどころとなった。

建主からの要望は、可能な限りの生活空間の確保と可能な限り狭さを感じさせない工夫、それと可能な限り明るくしたい、とのことだった。

ここでは、要望ｽﾍﾟｰｽの関係性を紐解き、隣接可能なｽﾍﾟｰｽの面積を調整しながら半階ずらしつつ縦に並べるｽｷｯﾌﾟﾌﾛｱ構成を採用した。耐火建築が求められる敷地条件だったが地盤が良好でなかったため比較的軽量な耐火木造とし、道路側は間口いっぱいの開口部を各階の必要光量やﾌﾟﾗｲﾊﾞｼｰの度合いに合わせて確保し、導いた光や風を建物内にいきわたらせる様にｽｷｯﾌﾟﾌﾛｱを構成する階段を透過性のあるﾒｯｼｭ階段とした。またその階段は上下階の移動手段であると同時に床同士をつなぐ構造体であり、階段の幅に変化をつけ大階段や飾り棚としても機能させた。

これによりﾜﾝﾌﾛｱが20㎡強であるにもかかわらず、建物の階下から最上階まで狭さを感じることなく明るく気配のつながる一体感を獲得している。

外装は白の大波鋼板を開口部の部分を間口いっぱいに黒の鋼板で欠き取った表情とし縦に伸びるﾌｧｻｰﾄﾞにｽﾄﾗｲﾌﾟのﾘｽﾞﾑを設けている。内装は明るく光が回るように床壁天井を白もしくはﾗｲﾄｸﾞﾚｰの素材感のないﾆｭｰﾄﾗﾙな背景とし、家具や建具とその枠をﾅﾁｭﾗﾙな木仕上げ、階段やｷｯﾁﾝ廻りはﾊｰﾄﾞな金属、間仕切りは手わざの残るFRPｸﾘｱ板として素材感を取り入れた。

前面道路に直交して伸びる道路遠望から近づくにつれ白と黒のｽﾄﾗｲﾌﾟに住民の気配が少しづつ投影される縦長の不思議な佇まいを醸しだしている。